本日も、岡本祐子先生の「アイデンティティ生涯発達論の射程」から引用いたします。第5章第4節は「中高年のメンタルヘルスとジェンダー」というタイトルで、中年期や現役引退期という人生の節目に、ジェンダーの問題がどのように現れ、それがメンタルヘルスにどのよう影響を与えているかを述べております。
P176では、中年期のジェンダーとして、男らしさと女らしさの統合として以下のように述べております。
『男性の場合、それは人生前半期の社会の中に根付き、力を発揮していく時期には、心の奥に後退してしまっていた女性性の側面への気づきと統合である。』
『(女性の場合)、人生前半期に、女らしさが自己の生き方の中心であった人は、人生後半期には、男らしさを自己の内部に統合いていくことが求められる。』
これらのことから次のようにまとめている。
『人生前半期の個としての自立、達成、有能性の獲得という、いわゆる男性的な資質のみでなく、他者をはぐくみ育てるという女性的な特質をも自らの中に育て、統合していくことを意味している。』
また、P178以降では、現役引退後の生き方とジェンダーの問題について述べております。
『少子高齢化を迎えた我が国において、老年期の生活の質、つまり生活の自立や精神的充足感は、ジェンダーの問題と深い関連性を有している。退職後の男性に対する「産業廃棄物」「粗大ゴミ」「濡れ落ち葉」「わしもわしも族」等の揶揄は、現役引退というライフステージの変化に対応して、生活の上での役割や性役割観を臨機応変に転換できるだけの柔軟性を持たない男性に向けられたものであろう。(中略)特に、老年期には男性性、女性性を兼ね備えた性役割観とその実践力をもつことが大切であろう。』
そして最後に次のようにまとめている。
『いずれにしても、中高年期の節目には、これまでの自分の生き方、自分にとって重要な他者との関わりのあり方を見直し、人生後半期へ向けてより自分らしい生き方を模索し実践していくことが求められる。その「自分らしい生き方」とは、これまでの自分の生き方を見直し、これまで生きられなかった自分、影の自分も、統合した生き方である。それが心の発達であり、アイデンティティのさらな深化・成熟である。ジェンダーに関する問題もその例外ではない。つまり、それまでの男性として、あるいは女性としての生き方を見直し、それらを「自分らしさ」の中に組み込んで生きる生き方を獲得することであろうと考える。
来週も就職支援の講義がありますので、岡本先生のラセン式モデルについても少し説明いたしますので、これらのジェンダー論についても触れてみたいと思います。
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