本日は、少し古い本になりますが、1998年出版の中西洋氏の「《賃金》《職業=労働組合》《国家》の理論」からみていきたいと思います。
この本は、第1章では、賃金のことについて歴史的、国際比較を通して述べておりますが、面白い視点がありました。
1998年の出版のため、まだそれほど「キャリア」的な視点があった時代ではないかと思いますが、経済学者である中西氏がキャリア的な発想を持っていたことは意外でした。
P55に以下のように述べております。
「”近代人”=〈働く人〉は精力を失いつつあるとしても、”現代人”=〈活動する人〉の「やる気(willingness)」は増大しているかもしれない。
(中略)
「近年わが国で〈労働〉にかえて、〈仕事〉という言葉が使われるようになってきたことは注目されてよい。〈労働:labour〉とは”労苦(toil and trouble)”であるが、〈仕事:Work ; Werk ; Ouvrage ; Opera〉とは本来自立的で自律的な作業をさすのであり、"〈労働〉的要素は依然強いが、〈遊び〉的な要素も含むようになっている活動”を自らの日常的な行為モデルにしようと考え始めたのである。」
また、P59には以下のように述べております。
「〈遊び〉はその外見いかんにかかわらず、ひどく真面目な活動である。”〈遊び:play〉に再設計された〈労働:labour〉”、これが現代から近未来へむけての〈仕事:work〉だと言ってもよいであろう」
〈遊び〉という表面的な言葉にとらわれてしまうと何を言っているのか分からなくなってしまいますが、〈遊び〉を「楽しく働くこと」と置き換え、〈仕事〉を「キャリア」と置き換えると、現在のキャリア的な視点になると思います。つまり、「自律型キャリア形成」ということをすでに考えていたということです。
ちなみに、中西氏は「近未来を設計する」という書籍も出版されているようですので、こちらの本も読みたいと思います。
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